皆様、メリークリスマス！
こんな夜だが僕の少年期の思い出を少し語らせてくれ。

恐らく長くなる。ひまな時に読んで貰えたら是幸い。

ところで、皆様は「ビデオディスク」とはご存知だろうか？
いや、今は知らなくて良い。読めば、大体分かって貰えるだろう。

僕はクリスマス、年末が近づくと近年、稀に思い出す事がある。

1980年代、家庭にもビデオデッキが普及し始め、街にレンタルビデオ屋が出来、音楽もレコードとCDが半々くらいかな？という
頃。

その頃、世はまさにバブル。
我が鎌田家もそれなりに盛り上がっていた気がする。

竜生少年、小学5年生。
ビックリマンシールを集め、ファミコンに夢中になりながら、ドッジボールとリトルリーグに精を出し、好きな女子を意識し始める。。
可愛い時代があったのだ、このおれにも。

当時、大家族だった我が家でも「ビデオデッキを買おう！」と云う空気が何となく蔓延し出していた。

年末年始の特番を録りたい、紅白歌合戦をカセットテープで音声のみ録音するのも、もう卒業！

我が家にも映像の再生を！！！

そんな時代の流れと家族の声に対し、立ち上がったのは我が祖父。

彼は偉大だった。家を増築しよう、と言えば部屋が増え、庭にビルを建てよう、と言ったらビルが建つ。

チャンネル争いも、いつだって彼が勝つ。
土曜の夜なんて、毎週暴れん坊将軍。
オレが観たい番組なんて観れやしない。
チャンネル争いに負けた自分はオレたちひょうきん族を暖房のない部屋でガタガタ震えながら観た思い出。

正直、自分は相当不貞腐れていただろう。祖父にも冷たくしてしまっていただろう。

しかし！！
ビデオデッキを買えば録画出来るじゃないか。見たい番組をオレが録画してしまえば、祖父は暴れん坊将軍だろうが水戸黄門だろうが銭形平次だろうがゆっくり観られるのだ。

こちらだって、録画してるんだぜ？ひょうきん族。夜ヒットだって、やまだかつてないテレビだって、後で観られるぜ！？って心の余裕で祖父にも優しく出来るだろう。そう、チャンネル争いなんて過去の戦争になるのだ。

我々はこの冷たい戦争を辞められるのだ。
ビデオ、万歳！ビデオデッキ！万歳！！

そこからの祖父の動きは早かった。
すぐに近所の電気屋に赴き、話を付けてきた。おそらく代金も払ってテレビとの接続だなんだの手配もここで済ませてきたのだろう。

帰宅した祖父に対し、僕はこの時ほど祖父を誇らしく思ったことはなかっただろう。
はしゃぐ僕を見て少し笑みを浮かべて、「近いうちに届くぞ」と言っていた祖父を忘れられない。

そして何日待ったのだろうか、思い出せないが。
確かクリスマスくらいだった気がする。
そう、ちょうど年末感が蔓延り出した今頃の寒い時期。

恐らく冬休みに入り、昼は遊びまわって夕方帰宅すると。

遂に来た！我が家のテレビの上に鎮座ましましている、ビデオデッキ！！！って、あれ？？

確かにテレビの上にビデオデッキ然な黒いボディ。こたつの上には見たことないくらいボタンだらけのセクシーなリモコン。

だけど、なんか違う。友達の家や電気屋で見たそれと違う。

当時、ビデオの規格としてVHS、Betaがあったのは知っている。

だが、書いてある表記が、、、

「VHD」。。。

な、、なんだこれ。。知らないぞ。。
ビデオテープを入れるようなところもヘンだ。

酷く長いんだ。長っぽそいんだ。

なんだ？レコードでも入るのか？？
あ！わかった、レーザーディスクだ！LDだ！最近発売されて話題のLDだろ！

いや、でも、「LD」って書いてない。。
何度見ても、「VHD」。。。
このくらいの文字の違いは小学生にでも分かるさ。
しかし、LDが高画質、高音質なのは知っていた。でも、、、録画は出来ない。

しかも、「VHD」。。レーザーディスクですら無い。

ここで、冒頭で触れた「ビデオディスク」に戻ろう。

VHDとは、、ビデオディスクプレイヤーと呼ばれ、当時ビクターが高画質、高音質にこだわりつつも、LDには出来ない、一時停止の静止画像、スローモーション再生、チャプターの選択等を盛り込んだ意欲的な、当時最先端なシロモノ(←今調べて初めて知った)。
平たく云うと、今のDVD に近いかもしれない(LDもね)。

ちなみにビデオテープに当たるディスクは一言で言うと「バカでかいMD」だと思って頂いて結構。四角いのよ。で、中にディスクが入ってる。
(ちなみにLDはバカでかいCDだと思って頂いてOK)
録画は出来ない。、再生専用。
しかも、LDとの覇権争いに負け、数年後には這々の体で息を引き取る。
(いわゆるソフト的なものはかなり限られ、うちには後に父が買ってきた「007 ネバーセイ　ネバーアゲイン」と長兄が買ったオジーオズボーン「Live！」しか無かった。しかも高い！1万円は余裕で超える。)

コレだったの。

取説を、息も絶え絶え血眼で見ていると祖父が

「いいだろ？カラオケする為に買ったんだ」

おもむろにマイクを接続し、同時に購入したであろうカラオケ大全なるものを本体に挿入し、家族に「祝い船」を披露する祖父。


その晩、僕は自害を試み自室の窓を開け飛び降りました。しかし平家だった為、はたから見たら、「くつしたで庭に降りた」だけでした。

結局、紅白の録画も出来ず、祖父の毎日続くカラオケ地獄にチャンネル争いすら忘れ、死んだ目でテレビを見つめる竜生少年に明日はあるのか？？


鎌田家の「ビデオ騒動」はまだまだ続く、、、、のか！？

竜生