2016/05/02
泣かない強さ
僕は親父が泣いたところを一度も見た事がなかった。
日常生活はもちろん映画を観ていても泣いているところを一度も見た事がなかった。
おじいちゃん、つまり自分の父親がこの世を去った時も親父は当時20代だったにもかかわらず泣かなかったらしい。
今泣いている場合じゃないオレがしっかりしないと、と思ったからだと言っていたが、30代も後半どっぷりの僕は親父がこの世を去った時に人前おかまいなしで号泣してしまったと言うのに。
おばあちゃんが亡くなった時もそうだ。
僕は無神経に「悲しくないの?」と尋ねたが、親父は「わしはばあちゃんにはやれる事はすべてやった。だからなにも後悔がない」と空を見ながら話していた。
確かに親父はおばちゃんに会いに行っては、おばあちゃんが友達と縁側でお話が出来るようにと電気毛布やこたつを差し入れしたりする気配りもしていた。
決して冷たい人ではなく、墓参りも欠かさず行い、その際には「こうやっているとおかぁの声が聞こえてくるんや。ほんまに話してるみたいやぞ」と言っていた。
その意味が、僕は親父が亡くなった今良く分かる。
親父の声が時々聞こえてくる。いや正確には、親父ならこういうだろうと思う声が聞こえてくるのだ。
そんな親父の涙を見たのは亡くなる前日の病院。
肺が苦しくて痰が溜まる。でも体も弱っているので自分で痰がとれない。
看護婦さんが喉の奥にチューブを差し込み痰を取ってくれるのだが、これが苦しいのと気持ち悪いのが相まって涙が出てしまう。
欠伸の時のそれと同じように生理現象で出る涙だった。
そんな涙でも僕は初めて見る涙だったので、戸惑った。
悩んだが、そっとティッシュでそれを拭き取ってあげた。
なぜだか僕の方が泣きそうになった。
親父に比べると僕は泣き虫だ。
優しいやつだと言ってくれる人もいるだろうけど、男としての覚悟や資質としてまだ足りないものがあるのだと思う。
僕も結婚して子供が出来ると変わるのだろうか。
泣かない強さを身につけられるのだろうか。
いや、泣く泣かないの問題ではない。
僕にあの覚悟と資質を養えるのだろうか。
リビングの親父の写真が僕を見て笑っている。
「大丈夫じゃ」
今、懐かしい声が聞こえた気がした。
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